尼寺へ行け
洋の東西を問わず女性にとって髪は命。それを剃ることは世を捨てることを意味した。かと思えばアイドルグループの一員であることを捨てられないための坊主頭だという。いや、このグループAKB48が宗教だとするとやはり「出家」なのか。そんなコメントで済ましたいところだが、当人の弁明の次の部分が気になった。
「メンバーにも事務所の人間にも、誰にも相談せずに、坊主にすることを自分で決めました。」
もし相談の上ならばイジメ、パワハラ、あるいはリンチ事件となる。そのことを分かってのこの文言だと思う。本当に自発的かも疑わしい。週刊誌発売日に合わせた謝罪ビデオ公開などその後の動きは、これがシナリオがあってのプロモーションと勘ぐられて当然だ。
その視点での批判が少ないことを私は危惧するのだが、引用(1)ヤフーニュースのネット調査で「やりすぎ」の声が多数であったとに、とりあえず胸を撫で下ろす。杏野はるな氏のコメント(引用2)も頼もしい。
ナチスによる迫害を受けたユダヤ女性への連想など、西欧文化には女性の丸刈りには陵辱あるいはリンチのイメージが強くつきまとう。引用(3)の石井孝明氏が紹介するロバート・キャパの写真は有名で、このプロットは2000年公開のイタリア映画『マレーナ』(写真)(Wikipedia)でもそっくり使われている。

AKB48をプロモートしてきた人物は現在のネット社会で西欧メディアへの影響も当然読めるはずだし、国内での反発も十分予想しただろう。その損得勘定の上で今回のシナリオだとすると、大衆はその程度と見られていることは哀しいことだ。
引用
1. 『丸坊主に「やりすぎ」が64%』(瞬刊リサーチ)
2. 「坊主になることが反省なのか? そしてメディアのあり方。」(杏野はるな)
3. 「女性の丸刈りを映す2つの異様な写真」(石井 孝明)
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「賃金奴隷」の崩壊
さきに私は人口ピラミッドを示して、少子高齢化が社会保障負担の増大にそのまま繋がらないとした。では何が変わったのか。かって終身雇用の時代には、労働者の子女の養育は企業が面倒をみていた。家族手当はその一例。公はそれから外れる高齢者や母子家庭などを看ればよい。そういう分担ができていた。
なぜそういう分担ができたかというと、企業にとってその利益の源泉である労働者が、将来に渡っても存続してもらわないと困る。労働者の子女は将来の金の卵で、それを養うことは企業にとっても必要だったから。対して働けなくなった高齢者は企業には必要ない。これは公に任されたのだった。
そういうわけで少子高齢化は高齢者の生活を保護する公の負担を必然的に大きくする。だが公が面倒みなければならない階層は高齢者に止まらない。
小泉政権以来、非正規雇用の比重が大きくなる。彼らは企業にとって使い捨ての人材となる。終身雇用を賃金奴隷と例えるられるかもしれないが、非正規雇用に至るとすでに奴隷とは言えない。単に市場で買うことの出きる生産器材でしかない。奴隷ならばそれが長生きし子供も生んで殖えてくれると、奴隷主にとって嬉しいではないか。できれば病気などもしないよう大切に使うだろう。しかし器材ならば、古くなったり故障すれば買い換えたほうが経済的かもしれぬ。
高度経済成長から停滞期に入る。終身雇用制は崩れ、労働力の流動化が目指されると、失業者は増え、職にありついても家族を養うには充分でない収入。企業が労働者階級の存続さえ責任を負わなくなった現在、公が面倒を見なければならないのは高齢者と子供たち、加えて増大する失業者と、広範に広がったのは必然の結果だった。
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物が売れなきゃ始まらない
さきに私はこのブログで、日本国民の生活水準を全般的に引き下げることで「日本での人件費も安上がりになって、国内での企業活動も楽になる。」が、財界や官僚の描くシナリオと書いた。しかしこれは成功しない。賃金が下がり人件費の負担が小さくなったとしても、それで物やサービスを作っても売れない。国民の財布が乏しいからだ。物が売れなきゃ儲ける術がない。「賃金を下げれば企業活動が活発になり雇用が増える」というのは幻想に終わる。
隘路があるとすれば、国内需要に期待せず、輸出にそれを求めるというもの。しかし、どこに売るのか。中国?米国?欧州?いずれも拡大は期待できない。ならば新興国?
日本人は貧しくとも勤勉で、製品を輸出することで大きく成長してきた。しかしそれは昔の話。いまや日本のGDPは世界第3位の経済大国。その国が内需を縮小し他国に需要を求めるなど、マクロに見て成立するわけがない。想像してみよう。米国をはじめすべての国がそういう政策を採ったらどうなる?
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人口ピラミッド
左の三角形と右の三角形。色分けを別にすれば上下をひっくり返しただけで同じ。賢明な方々はこの図で私が何を言いたいかすでにお察しだろう。
これを人口ピラミッドと見れば、左は高度成長期の日本。「核家族」の典型は両親に子供3人。右までは行かぬが昨今の3世代家族は、祖父母、若夫婦、一人っ子。
全体の三角を支える稼ぎ手が図中の青い帯だとすると、その比率は左右で変わらない。「税と社会保障」をマクロに眺めるとそういうことになる。
政府が言ってきた「胴上げ型社会から騎馬戦、肩車型へ」というのは、現役世代(青色部分)の払う掛金で現在の受給者(黄色部分)に支払うという年金制度が将来破綻するという限りで正しい。
人口ピラミッドの変化を前提に、それに対応する年金制度の改革を言うならば、年金会計への国庫からの繰入れは当然。それがマクロに見て財政破綻の原因とはならないことは上図が語っているのではないか。
もちろん人口が先細る少子高齢化は是認することはできない。なぜこうなったかや、その影響については続きで。
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中国で人件費高騰の理由
日本の人件費は高く、人件費の安い中国に工場を建てることが流行った時期がある。その中国も人件費が上がってきて、いまはベトナム、これからはミャンマーなどが有望視される。なぜ中国での人件費は上昇したのか。需要と供給で説明することを試みるより、中国へ世界からの企業進出のおかげで中国人の生活水準が上がったと説明するほうが早いだろう。
さて日本では社会保障費の増大で財政は逼迫。増税するか社会保障を縮小するか……という議論もなされている。「税と社会保障の一体改革」がそれ。
しかしさきに見たように消費税増税しても税収が増える見込みがない。消費税増税に先行して大企業減税を実施するなど、財務省には財政赤字を改善しようとする気が見えない。
じつは政府の財政赤字は意識して作られたものではないかという気が私はしている。そのことはさておき、もし財政赤字を改善するのが目的ではないとしたら、生活保護基準引き下げなど社会保障削減の本当の狙いは何なのか?私の推測の楽しみは続く。
想像するに日本の生活水準を全般的に引き下げることそのものが目的なのではないだろうか。
日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とある。この「最低生活」を、贅沢言わず辛うじて生命を繋ぐギリギリまで下げ、それと近い低所得者層をたくさん作る。そうすれば日本での人件費も安上がりになって、国内での企業活動も楽になる。……そのような絵を描いているのではないかと。このデフレ不況、高失業率の下で公務員の人員削減や賃金カットも、そのシナリオならば理由が付く。
しかし、このシナリオは成功しない。続きはこちら。
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