谷垣総裁はなぜ降ろされた?
さきの総選挙(2012年)を前にして自民党は谷垣禎一総裁に代えて安倍晋三を新総裁を選んだ。なぜ谷垣ではダメなのか、その代わりが選りにもよってなぜ安倍なのか。私には疑問だった。しかし、こういうことなのかと想像することができる。谷垣前総裁は国会を解散に追い込んだ功労者だった。逆にそのことが彼を選挙の看板にできない理由でもある。2012年8月、民自公3党談合で消費税増税法案を可決、その国会最終盤の参議院で内閣問責決議案を巡って、あわや3党合意はご破算、消費税増税は流産するかもしれないという危機があった。これを野田-谷垣密室会談で解散の約束と引換に消費税増税法案を可決したのだった。
増税を看板に選挙で勝てるわけがない。この首をすげ替えることで、自民党は選挙のさいに消費税増税についてあいまいにすることができた。デフレ脱却が先で、「経済状況を確認した上で8%消費税の実施を内閣が判断する。」(2012年11月21日発表の自民党選挙公約(案)J-ファイル2012)とのこと。
もうひとつの問題は選挙後の政権枠組み。自公で安定多数を取ればよいのだが、その保証はなかった。自公民で行くにも国民の反発が予想される。そこで有望なのは維新の会を取り込むことだった。安倍晋三は「橋下氏は戦いの同志」とまで持ち上げるほど維新の会とは共通点がある。そもそも橋下徹が維新の会の国政進出にあたって党首に迎えようとしたのが安倍晋三だった。いっぽうで谷垣は橋下の危険性を識る一人で、維新の会との連携に支障があるかもしれない。
以前のブログ記事にも書いたが、支配層にはこの国の操縦の仕方が分らない。分からぬままに、ハンドルをとりあえず右に切ってみる。 その危険を戦前のドイツに学ぶべきだ。
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占領軍による押し付け(2)官公労対策
安倍晋三は繰り返し「官公労主体の民主党を倒さねばならない」と言っている。雑多な民主党の中でなぜ官公労なのか。そもそも官公労は1958年に解散している。「官公労」という今は存在しない組織名を使うところ、どうもこの人は半世紀ほど前からタイムマシンに乗ってきたらしい。(当ブログ内関連記事:「共産党・日教組・朝日新聞」)
日本の公務員にはスト権が無い。そんなこと当たり前と思うかもしれないが、他の国、たとえばフランスなんか教師もしょっちゅうストライキをやる。日本も批准しているILO第87号条約や第98号条約は労働者の団結権及び団体交渉権の保障について定めており、公務員もその例外ではない。日本が公務員の労働基本権を制限していることについて、その改善を求める勧告がILOから再三出されている。
日本ばかりがなぜそのようになったかは、戦後の米軍占領下に遡る。
戦後日本の民主化を進めていた進駐軍(GHQ)だが、高まる労働運動に「このままでは日本が共産化する」と危機感を持ったのだろう、1947年2月1日に予定されていたゼネラル・ストライキを禁止する。このゼネストの主力に官公労があった。これを抑え込むためにGHQは1948年、芦田内閣をして政令201号を出させ、国家公務員法の修正と人事院規則により国家公務員の団体交渉権、争議権を否認するとともに政治活動に制限を加える。
なお、地方公務員法での労働権・政治活動の制限は国家公務員ほど厳しくない。その理由として成立時期の違いも指摘されているが、重要度についてGHQの認識が国家公務員に比べて低かったのだろうと私は想像する。これを国家公務員並み、いやそれ以上に制限する大阪市の例にはマッカーサーも顔負けだ。
参考リンク
1. 「主要諸外国における公務員の労使関係」(人事院)
2. 「改正国家公務員法の成立の経緯」(人事院)
3. 労働基本権(ウィキペディア)
4. 二・一ゼネスト(ウィキペディア)
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占領軍による押し付け
現行憲法は占領軍による押し付けによるものだから「自主憲法」を制定すべきだという勢力がある。しかし占領軍による押し付けを言うならば、それは日米安保条約ではないのか。1952年のサンフランシスコ講和にあたって、アメリカ軍が以降も日本に居座る根拠として、押し付けたものが(旧)日米安保条約だった。敗戦にあたって日本が受諾したポツダム宣言にはこう書いてある。
十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
すなわち日本の民主化、日本軍の武装解除と再軍備の防止(諸目的)を達成し、国民主権の平和的政府が樹立されたら占領軍は撤収することになっている。すると占領軍が駐留軍と名前だけ変えて現在も居座っているのは、平和的政府がまだできていないからなのか。再軍備の危険、いや事実上再軍備されているからなのか。
ヒントが安保条約第10条にある。現行日米安保条約の第10条に以下の規定がある。
いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
この規定にもとづき日米安保条約の廃棄を通告できる政府ができるとき、そのときこそ、やっとこの国が独立国となる。
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共産党・日教組・朝日新聞
ネット右翼というのは何だろうと思う。「日本共産党=日教組=朝日新聞」などと垂れ流すネット右翼がいる。「サヨク」の代表なんだそうだ。あるいは橋下大阪市長の敵だとか。しかし日教組は民主党の支持母体。朝日新聞は橋下徹を持ち上げる最右翼なんだけどなあ。
日教組はかって社会党を推していたということでは左翼だったかもしれない。しかし、自社さ連立の村山内閣下で文部省との協調路線を採り、いまやその面影はない。朝日新聞が左翼的だったのは60年安保闘争の頃かもしれない。それも闘争の高まりを恐れて「議会政治を守れ」の七社共同宣言を主導し、闘争の矛先を岸内閣打倒のみに止めるよう誘導した首謀者だった。
共産党、日教組、朝日新聞が左翼の代表だと感じられるのは1960年の安保闘争以前の話で、その時代を知る者は現在70才以上のはず。津川雅彦がテレビ番組で「共産党、日教組、朝日新聞」の3つを並べたというから、その推測は正しいようだ。
時代の変化についていけない頑固老人はともかく、その言辞をろくに調べもせず鵜呑みにしている若者には困ったものだ。
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選挙制度とマスコミ
1994年に導入された小選挙区制と政党助成金が日本の政治をダメにしたと、私は書いた。この「政治改革」を提言したのが「21世紀臨調」。政財界などを総動員した陣容で、事務局は労務管理政策などで名を馳せる財界のシンクタンク「日本生産性本部」。そういえば、「やらせメール」の舞台となった玄海原発再稼働に関する説明番組も、この日本生産性本部が請け負っている。
この「21世紀臨調」のメンバーをウィキペディアで一瞥してみると、政財界とともにマスコミ関係も多いことが分かる。政府の正式諮問機関である第8次選挙制度審議会にも、マスコミ関係者が主要全国紙については根こそぎと言ってよいほど参加している。すなわちマスコミを取り込んで「政治改革」の案を取りまとめ、その力で国民世論を誘導して実施するという構図が見える。
このことに触れたブログをひとつ紹介しておく。
財界、21世紀臨調とマスコミの関係」テレビ・マスコミの現状にガッテン!!
マスコミを用いた世論誘導は世の常だが、日本では主要全国紙がテレビをも所有しているなど特有の問題もあると、日本共産党志位委員長は指摘している。
日本の巨大メディアを考える
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