お金の回りかた
「会社は利益を出している。その利益が配当に回っている傾向はない。給与にも回ってもない。利益はどこにいっているのか。会社の内部留保になっている」と麻生太郎財務・金融相は述べた(JCASTテレビウォッチ)。このグラフからは、いろんなことが見える。企業の業績は賃金の多寡になんの影響もない。大企業の利益は1998年のバブル崩壊以降も概ね上昇を続けている。いっぽう賃金は確実に減っている。
この間のデフレ不況で寂しくなっているのは庶民の懐だけで、大企業は潤っている。これでは消費不況は解消しないだろう。
ところで着実に増えている内部留保とはなにか。企業はその収益を本来は出資者(株主)に還元するか、一部はそうせずに再投資して事業の拡大のために使う。高度成長期にはそうしてきた。最近は新たに設備投資しても物が売れない。それで使い途の無い金が内部留保として滞留する。いうなればダブついた金が内部留保だ。
いまや内部留保の総計260兆円にのぼる。世界一金がダブついている日本経済で、いくら金融緩和をしても景気の向上には繋がらない理由がここにある。
円高が是正されて株価が上がり、アベノミクスは成功しているではないかと見るむきもある。思惑による動きとはいえ、異常な円高は是正された。しかし最近の貿易赤字の結果が遅れて現れたにすぎないという見方もできる。円安は輸出企業には追い風だが国全体の資産価値が国際的には下がったとも言える。
上昇株を見ると金融、自動車など輸出企業、公共工事期待のセメントやトラック輸送などだ。保有する外債、株式の含み益で経理上は好転しているかもしれない。しかしそれが賃金や設備投資に反映しない限り、実質の経済回復にはならない。
この続きは『自由主義国家ができること』で。
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