リッパー将軍の妄想
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』という長い題名の映画(1964年アメリカ)。東西冷戦下、米空軍の一司令官の独断によるソ連への核攻撃命令によって核戦争が勃発しそうになり、大統領はそれを食い止めようとするが失敗。人類滅亡への道が開く。「核抑止」の危うさを露わにすることとなった、笑えないブラック・コメディ。ことの起こりは「共産主義者の侵略がすでに進行している」という陰謀論に取り憑かれたリッパー将軍。その妄想とは……。
水道水にフッ素を入れるのは「共産主義者が仕組んだ」。水道水だけでなく「塩、小麦粉、砂糖やアイスクリームにまでそれは添加されており、それらを口することで、我々の純粋な体液が侵される」というものだった。

作者が何をヒントにこの陰謀論を思い付いたか定かでないが、ナチスドイツの「血と土」というスローガンに着目しよう。
ナチスドイツは食料安全保障の観点から食料自給率100%を目指した。都会を離れ農村で農事に就くことは奨励された。提唱された「バイオダイナミック農業」は農薬や化学肥料を使わない。「純粋なアーリア人」がドイツの土地を耕し、その作物を食べて「純粋なアーリア人」が育つという考え方が「血と土」というスローガンに込められている。
「食物から不純物を排除する」ことと、「アーリア人の血から不純な血を排斥する」こととは親和性が良かったのだ。やがてこれはユダヤ人の排斥から抹殺、すなわちジェノサイドへと辿り着いてしまう。
(参考リンク)20世紀・シネマ・パラダ イス
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