マンディを作ってみた

サウジアラビヤの結婚式などで出される料理であるマンディが、アラビアンナイトに登場する料理に近いのではないかと考えて、それを再現しようとした。レシピは別記事に

現地で日本と同じ短粒米を使うこともあるようだが、ここは長粒米、バスマティ・ライスをネットで入手した。香料にバラ水が気になっていたので、これもネット通販で入手。麝香はさすがに入手困難なので諦めた。

その他の香料だが、サウジアラビアでは「カブサの素」と言うべきミックス・ハーブがあるらしいが、日本では入手困難。パキスタン料理の「ビリアニの素」なら輸入食材店か通販で入手できる。ただしこれには唐辛子が入っている。それを嫌うならば、個別にスパイスを取り揃えることはできる。主な香料は次のようなもの。最初の4つの他は揃えられる範囲でよい。

サフラン代わりのターメリック、クミン、シナモン、クローブ、カルダモン、ナツメグ、コリアンダー、ロリエ。

米以外の具材は鶏肉と玉ネギ、ショウガ、ニンニクなど。砂糖とレモン汁で甘味、酸味を付ける。出汁にチキン・コンソメ。トッピングにアーモンド・スライス

炊き込みご飯の要領で炊飯器で炊くとカブサになる。鶏肉を香ばしくするためオーブンを使うレシピがある。ならば、下ゆでした米をいっしょにオーブンに入れるとマンディに近いものになるはずだ。



下ゆでした米を皿に入れ、その上に網を置いて鶏肉を載せオーブンで焼いてみた。

それらしきものはできたのだけど、米の下ゆでに失敗したらしく、少し塊ができてしまった。再度挑戦したい。

Posted on 10 Jul 2020, 23:59 - カテゴリ: 料理
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幻のアラブ料理

アラビアンナイトには頻繁に料理が出てくる。その中でロズバジャという料理に興味がそそられた。ある男がその料理を食べたあとで手を洗わなかったことで、新婚初夜に新妻がその匂いを咎めて男の親指を切り落としてしまうという怖いお話。

調べたところ、井上瑞子 が『アラビアンナイト美術館』でこの料理を再現している。ただしロズバジャではなくジールバージャという、鶏の煮込み料理。
http://pinhole.blog61.fc2.com/blog-entry-208.html

しかし、これには強い違和感があった。私の読んだ本には米と韮と香料でできているとあったから。

井上とは典拠が違うらしい。私のものは『完訳 千一夜物語』(岩波文庫)で、マルドリュス版を元にしている。井上が典拠にするカルカッタ2版やバートン版などによればジールバージャはクミン入りシチューであり、焼いた鳥の胸肉が入っており、砂糖や薔薇水、麝香で香り付けされている。ジールはクミンのことらしい、しかるに井上の再現レシピにクミンは入っていない。井上は玉ネギの成長した茎の代わりとして万能ネギを使っている。ガラン版ではニンニク入りのシチューとある。森本公誠(訳) タヌーヒー『イスラム帝国夜話』でディクバリーケの名で登場する。

どれが原典、オリジナルなのかは分からないので、私なりにこのストーリーにふさわしい料理を想像してみた。その鍵を列挙してみる。

1. 舞台は10世紀ごろのバグダッド
2. 匂いがきつい
3. 結婚式で出されている
4. ごちそうの中でも夢中にさせるほど美味

こう列記してみると、ますます食べたくなってくるではないか。アラブを中心に結婚式の定番料理を調べてみると、3つの候補が見つかった。サウジアラビアで カブサと呼ぶもの。またマンディ。パキスタン料理のビリヤニ。候補に挙げないがスペイン料理のパエリャもこれらの延長線上にあるパーティー料理と見える。

ビリヤニには唐辛子が入るのでスパイシーなカレーライスに近い。カブサやマンディのレシピに唐辛子は無いようだ。いずれも米料理で、使う香料も類似しているが、作り方が異なる。カブサは炊き込みご飯のようだが、マンディやビリヤニは蒸すので、日本の「おこわ」のような作り方になる。このうちでは特殊な作り方をするというのでマンディを最有力候補としたい。

シチューだとすると、スプーン代わりにパンを使ってすくうかつまむので、手に匂いは残らないはず。やはり米料理がここでは合っている。

カブサのレシピはネット上で見つかるが、マンディのほうは家庭での再現は難しいということで、レシピは見つからない。それでもオーブンを使えば近い物は作れそうに思える。
この方法でじっさいに作ってみた。
そのレシピはこちら


Posted on 2 Jul 2020, 20:34 - カテゴリ: 料理
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感染症と百舌鳥精進

新型コロナの感染が広まる中、中国で宅配は戸口に荷物を置き、客とは直接対面しないなどの様子が伝えられている。それで思い起こされたことがある。以前に紹介した百舌鳥精進

百舌鳥地域の旧家では正月のおせち料理に肉や魚を入れない(写真)。また家に篭もって外出を避け、訪問客とも喫食を同じにしないなどの風習が伝えられている。これは流行病(はやりやまい)を避ける行動が記憶されたものではなかろうか。


別のニュースでは奈良の春日大社で悪疫退散特別祈願が始められたとか。春日大社は藤原氏の氏神。奈良時代に疱瘡(天然痘)の流行があり、藤原四兄弟が相次いで亡くなるということがあった。彼らの女兄弟に聖武天皇の皇后となった光明子がいる。百舌鳥八幡宮の隣にある光明院はこの光明子が創建したものと伝えられている。また百舌鳥八幡宮の主祭神のひとつに春日大神が連ねられている。

光明院と百舌鳥八幡、百舌鳥精進、これら3つは百舌鳥地域に残された、奈良時代の流行病の記憶・痕跡ではないだろうか。


Posted on 6 Apr 2021, 13:01 - カテゴリ: 郷土史
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シンデレラのスカート丈

ディズニーのシンデレラ物語はペロー童話をベースにグリム童話からのエピソードやアイテムを拝借している。ペロー童話は17世紀のフランス。ディズニーアニメ『シンデレラ』(1950)はこの時代設定を基調としつつ、アニメ公開当時のアメリカ合衆国の観客に親近感を与えるようアレンジされている。

17世紀にしては主人公の普段着のスカート丈が短いのに違和感があった。この点について 江良智美(2010)(pdf) によれば、
ペロー原作の 17 世紀を舞台にしているわけではなく,基本的な家屋構造や移動手段,脇役の衣装などは近世から近代までの風俗を混在させたような雰囲気で描かれている.しかし,シンデレラと王子の服飾は,明確に 20 世紀初頭をイメージさせる現代的なスタイルで描かれている.
さらに主人公シンデレラについて言えば、1940年代後半のアメリカ国内の服飾流行であるという。

Youtube


セニョリータと呼ばれる理由
真夜中12時を打つ鐘の音に、シンデレラは慌てて城を後にする。見張りをしていた大公は「待って、お嬢さん!」と呼び止めようとする。このとき大公はシンデレラに英語 Young Lady, フランス語 Madmoiselle, スペイン語 Señorita と、3ヶ国語で呼びかける。これはなぜなのかを考えてみる。

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最初、寝ぼけ眼に不意を突かれて、大公にとってネイティブの英語が口を突いて出たのだろう。その後、舞踏会ならば公式のフランス語で。宮廷の誰も見覚えのないシンデレラは、もしかすると隣国の王女かもしれない。最後はとりあえずスペイン語で呼んでみたというところか。

舞踏会で紹介される出席者の多くはマドモワゼルの肩書で、フランス系らしき名前が並ぶ。しかし、寝ぼけた大公の口を突いて出たのが英語だということは、舞台は英語圏。続いてフランス語とスペイン語というのは、やはりフランスの香りを残しつつ、合衆国の観客にとって自然なように配慮されたものだろう。

ちなみにフランス語吹き替えは3度とも mademoiselle で統一されている。(Youtube

関連記事:シンデレラの本名
     シンデレラはフランス語を話せる?

初出: 06 Sep 2019

Posted on 7 Sep 2019, 22:31 - カテゴリ: おとぎ話
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シンデレラはフランス語を話せる?

ディズニー映画『シンデレラ』実写版(2015)の冒頭に、主人公エラに父親がフランス語を教える場面がある。

シンデレラはフランス語を話せるのか?それは話の舞台がどこなのか、シンデレラはどこの人なのかに依る。舞台がフランス語圏ならば、フランス語を話すのは当然で、問題にならない。

ディズニーのシンデレラ物語はペロー童話をベースにグリム童話からのエピソードやアイテムを拝借している。ペロー童話は17世紀のフランス。ディズニーアニメ『シンデレラ』(1950)はこの時代設定を基本としている。このアニメ版については別記事を起こす。

『シンデレラ』実写版はディズニーのロンドン撮影所で制作されたこともあって、衣装は19世紀の英国のファッションがモデルになっているという。英国に限らず17~19世紀のヨーロッパでフランス語は国際語として、とりわけ社交界では基本の素養だった。

上流階級の出の継母が舞踏会用のドレスを仕立てるにあたって、シンデレラに対しフランス語をひけらかす。「どうせお前はフランス語もできないくせに、舞踏会に行こうなど分不相応」と思い知らせたかったのだろう。それに対し主人公もフランス語で返して驚かせている。父親が貿易商で、主人公エラにフランス語を教えていたとは、あてが外れた。


Youtube

ところが、この実写版の舞踏会の場面でフランス語がいっさい使われていないのは、一連の流れとは整合がとれず残念だった。

舞踏会で森の少女と再会した王子は、たぶん政略結婚相手であるサラゴサ国シェリーナ王女(サラゴサはスペインの地名で、演じる女優はスペイン人)のために用意したであろう大仰なセリフをたどたどしく、主人公をダンスに誘う。ここは本来ならフランス語でしょう。しかし映画は英語で。
Your Highness...
If I may,
that is,
it would give me the greatest pleasure,
if you would do me the honor
of letting me lead you through this...
the first...
Dance?
Yes, dance.
That's it.
Movie Script

映画冒頭で父親は娘エラをフランス語でダンスに誘い、エラはフランス語で「喜んで」と答えている。しかるに、この舞踏会の場面で、王子は英語だし、エラの返事は無言でうなづくだけ。なんのためにフランス語を習ったのか、まったく意味をなしていない。

追記
映画冒頭で父親が娘エラをフランス語でダンスに誘い、エラもフランス語で答えている場面、日本語吹き替えでは「シル・ヴ・プレ(お願いします)」と、している。
オリジナルは舞踏会での定型的答えである「アヴェク・プレジール(喜んで)」なのだが……。この他にも日本語吹き替えの変ちくりんなフランス語は気になる。

関連記事:シンデレラの本名
     シンデレラのスカート丈

初出: 4 Sep 2019

Posted on 2 Jul 2020, 21:35 - カテゴリ: おとぎ話
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