伝統工法の進化形?

大阪・関西万博2025 会場の大屋根リングさきの記事では、伝統の貫工法で隙間を埋めるべき楔(くさび)の代わりに鋼板とボルトを用いると明らかにしたことから、「伝統工法を受け継いだ現代の進化形なのでは」と、思う方もいるかもしれないので追記する。これは「進化形」ではなく別物。専門外で聞きかじった話で繋いでいるので、見当外れならお叱りを受けたい。

日本の貫工法は古くは縄文時代からという説もある。ともかく明治に西洋の建築技術が入るまで、日本の建築物は柱と梁だけで支え、斜めの補強部材は無かった。地震があれば当然揺れる。楔を打った接合部はキシむ。そのことで振動エネルギーを吸収するようになっている。

この部分を鋼板とボルトで固定することは、振動エネルギーの吸収を期待しない、ラーメン構造という別物になってしまう。典型的な木質ラーメン構造で部材は突合せだが、大屋根リングでは柱に穴を開けて梁を貫通させる。それでもどうやって建物を支えるかという点で伝統工法とは似て非なるものとなる。

木材の使い方についても触れたい。伝統的には自然木から丸太をそのまま、あるいは切り出すのだが、大屋根リングでは集成材を使っている(ベニヤ板と同じ手法)。そのほうが扱いやすいので「進化形」とも言える。

木材の弱点は水。雨ざらしだと朽ちてゆく。大屋根リングは早くから建築を始めているので、すでに1年〜1年半経過していて、一部に変色が見られる。藤本壮介氏は「何らかの形で残したい」と希望を述べているが、何年持たせようと考えているのだろうか。

清水の舞台も雨ざらしといえばそうかもだが、それなりに対策がされている。舞台の上には屋根がある。大屋根リングには屋根が無い。もちろん防水処理はしているだろう。

大屋根リングの基礎には(一部?)杭打ちがされているそうだが、その基礎に柱は固定されているのだろうか?日本の伝統工法で柱は地面に固定されていない。このことと貫工法とが合わさって免震構造となっている。柱は石の上に乗っているが、この礎石は水はけが良い形になっている。大屋根リングはそのように見えず、足元から腐食しかかっているのが認められる。

木口から、また貫の部分から水が染み込んでくる。清水の舞台ではその対策に小さな庇(ひさし)が付けられているが、大屋根リングはどうだろう?

Posted on 3 May 2025, 20:17 - カテゴリ: 万博
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