落ちたエレベーター

東京メトロ平和台駅でエレベータを吊るワイヤーロープが切れて落下する事故があった(2011年7月28日) 。 幸いに非常ブレーキで止まったが、サスペンス映画にありそうな、恐ろしい話である。

こういう事故はあってはならないので、普通どういう設計をするかというと、 ロープに掛かる最大荷重を計算したうえで、その3倍程度の強度のロープを、さらに2本以上使う。 (報告によれば当該エレベータのロープは3本、合計の安全率は8.2倍だった)

なぜそういうことをするかというと、計算上の強度と実際のロープでは材質や出来栄えで違いがあるかもしれない。 また使用中にサビもすれば劣化もする。もちろん定期点検などで保守するとしても、抜けがあるかもしれない。

もし1本が切れたらさすがにそれは分かるので、そのときに交換すればよい。 2本切れたとしても、最後の1本で充分に支えきれるはず。

それでも事故は起こる。このとき3本すべてが同時に切れた。乗客は1人だった。腰を打ち付けただけの軽傷で済んだらしい。

(これとは別に、エレベータが底まで落ちて重傷を負った例もある。図をクリックするとリンク先に飛びます。)


「安全余裕」という原発業界が発明した用語があるが、一般の機械設計や建築業界では設計上の強度を最大負荷の何倍にとるかを「安全率」と呼ぶ。

エレベーターの例をここで出したが、橋梁など重要な構造物で安全率は普通4〜10倍に採られる。でも、まともな設計者は、それで「余裕」があるとは決して思わない。

「世界一厳しい安全基準」というものが本当かどうかは別に置いても、そのような基準にしたがったからといって、事故の可能性がなくなるわけではない。

エレベーターの事故ならば、その被害は箱の中に限られる。しかし原子力発電所でひとたび重大事故が発生すると、どんなことになるか。私たちは福島の例で、それを知っているはずだ。被害の範囲はあまりに広く、また時間とともに収束するどころか、放射能汚染はむしろ拡大している。

関連記事、参考リンク:
大飯原発の耐震性は余裕なのか
大飯原発運転差止請求事件判決要旨(NPJへのリンク)

Posted on 16 Jul 2014, 16:30 - カテゴリ: 原発
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コメント:

Posted on 11 Oct 2014, 23:25 by kei3_linux
標題無し
大韓民国であった、
大変不幸な貨客船の事故の時、
考えていたのが安全率の事でした。
船に関しても安全率と呼ぶのかはわかりませんけど。
バラスト水を規定通り積まない,
規定以上に貨物を積む,
改装により船の重心が上昇する等の理由がより事故の複合的な主因と考えてはいます。
ですが少々安全率の低い設計の船だったのではないのかとも考えました。
安全余裕ですか………変な用語ですね。
国語の出来ない業界ですね。
国語ばかりで無く、
図表を出せば巧妙なごまかしを行い(含ませ)、
発する言葉は不誠実なものばかりです。
それが大変いらだたせ、怒りを持ちます。
原子力発電所の耐震性は大変低いと考えざる得ません。
その様な業界に限って、余裕などという言葉を使うのですから、悪意に満ちています。

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