The Madonna and Child
with St John the Baptist
and Mary Magdalen
(1510-15)
Musee du Louvre, Paris
聖母マリアが幼子イエスを抱く『聖母子像』はカトリックの宗教画の中ではもっともポピュラーなものである。 聖母と幼子イエスの他にも聖人が書き加えられることも多い。 右はそのひとつで、聖母子の隣にお馴染のマグダラのマリアが例によって香油壺を捧げている。 画面左手の男性は洗礼者ヨハネ。荒野に住んでいたので裸足でボロを纏っている。 イエスが幼子の時期にはヨハネも幼ないはずと、幼子の姿で描かれることも多い。 『聖母子像』に幼子が2人描かれていたら、いっぽうはイエス、もう一人は洗礼者ヨハネである。 マグダラのマリアも本来ならばまだ産まれていないはずだが、 ここではそういう時間的なことは細かく言わず、2人とも成人の姿で描かれている。
この絵で幼子イエスを取り巻く3人の役割を考えてみよう。 聖母マリアは肉なるイエス、すなわち人間イエスの産みの親。 対して洗礼者ヨハネは宗教者としてのイエスの産みの親と言える。 そしてマグダラのマリアはイエスの死と復活、すなわち イエスの救世主キリストとしての誕生を見届ける者である。
で、左は『MATRIX RELOADED』のDVDボックスである。 中央のネオが救世主キリストならば、 彼を探し求め、彼と出会ってからは彼の師となる モーフィアス(画面右の人物)はさしずめ洗礼者ヨハネであろう。 そしてネオを挟んで立つ女性、その名もトリニティ(カトリックの教義である「三位一体」の意)は何者であろうか。 一度は死んだはずのネオに口づけて生き返らせ、救世主として目覚めさせる 彼女こそがマグダラのマリアである (マトリックス2 宗教象徴学)。
聖母マリアはどこかって? … MATRIXそれ自体かもしれませんね。 英語の matrix には「母体」あるいは「子宮」という意味がありますから。
蛇足になるが、キリストを挟んで聖女マグダラと洗礼者ヨハネの取り合せは ボッティチェリによる『トリニティ』 など、しばしば見られる。