排外主義

国内の問題から目を逸らすため、外国の脅威を煽ることは常套の手法だ。しかし、いわゆるネット右翼のそれは戦前ドイツのナチズムとあまりに似すぎ。

ドイツは第1次世界大戦で敗れ、戦勝国である英国、フランスなどから多額の賠償金を負わされる(ベルサイユ条約)。戦後は当時先進の民主的憲法(ワイマール憲法)の下で共和制を歩む。しかし大統領は旧保守派、議会第1党は社会民主党という「ねじれ」で政情は不安定だった。その状況下で国民の期待を得たのがナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)だった。

ナチスはドイツ窮乏の原因は戦勝国が押し付けたベルサイユ条約、それと戦えないワイマール体制、それらを裏で操るユダヤにあるとした。

いまの日本の問題は戦後レジーム(=ヤルタ・ポツダム体制)にあり、反日勢力と呼応する在日コリアンを打倒すべき敵とするネット右翼の主張がこれと瓜二つなことに驚く。

ヨーロッパにおける反ユダヤ感情は根深い。シェイクスピアによる戯曲『ベニスの商人』には強欲なユダヤ人の金貸しが登場する。第1次大戦のころヨーロッパで有力な金融資本ロスチャイルド家はユダヤ系ドイツ人だったという。国が勝っても負けても戦費を貸した金融資本はちゃっかり潤う。彼らを「我々が戦場で流した血を吸って肥太る蛭」と、ヒトラーは呼んだ。

しかしこの喧伝とは裏腹に、実際に迫害を受けた多くは貧しいユダヤ人たちなど社会的弱者だった。日本の右翼が在日コリアンを排撃するのに「彼らがパチンコ業界を牛耳っていて」云々を持ち出すのは、ナチスが「死の商人」たる国際金融資本を批判したのに比べるとスケールはかなり小さい。いずれにせよじっさいは弱い者いじめにすぎないことは共通している。

当サイト内の関連ページ:
「ヒトラーの時代と戦前の日本(橋下徹はヒトラーになれるか?の後半部分)」

Posted on 15 Jan 2013, 20:57 - カテゴリ: 右傾化とハシズム
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