最初の訪問地ミラノでサンタ・マリア・デッリ・グラッツェ教会を訪れた。 教会付属の食堂であったところにレオナルド・ダ・ビンチによる『最後の晩餐』の壁画がある。 『最後の晩餐』の話は少しおいておいて、 その対面の壁画、モントルファーノ作とされる『磔刑図』に目をやろう。 居ました! 中央下、十字架の根本にしがみついている女性が聖女マグダラのマリアである(写真右)。
旅はこのあと、ベネツィアではアカデミア美術館で中世以降の、 フィレンツェではウフィッツィ美術館、ピッツィ宮パラティーナ美術館でルネサンス期美術を中心にと 続くのだが、あまたの宗教画の中に聖女マグダラのマリアの姿を認めることができる。 ここでその見分け方を書いておく。
Carlo Crivelli Mary Magdalene Rijksmuseum Amsterdam |
- 巻き毛がちの金髪を長く垂らしており、ときに足にまで届く。 他の聖女が髪を完全に隠しているのに、一人だけ金髪が覗いていたら、それはマグダラのマリア。 - イエスの足を自らの髪で拭ったという福音書のエピソードから。また晩年に髪を伸びるに任せていたという説話。
- 衣の裾から素足が覗いていたら、たぶんマグダラのマリア。 - 悔悛前は娼婦的なキャラクターであったとする説話、あるいはエジプトのマリアとの混同。 日本の浮世絵でも花魁が裾から素足を見せる表現あり。
- 胸元など肌の露出が多い。ときに裸身で描かれる。
- イエスと共に描かれるとき、彼の足もと近くに居ることが多い。 - イエスの足に涙を落とし、口づけし、足を自らの髪で拭ったという福音書のエピソードから。
- 大きな身振りなど激しい感情表現を表すことが多い。
- 衣服は朱色であることが多い。 - いっぽう聖母マリアは紺色の衣服。
- 衣装が豪華であったり、宝飾を身に付けていることがある。
- 次のような持ち物(アトリビュート)を持つことが多い。とりわけ香油壺はマグダラのマリア専売。
- 香油壺: イエスの墓参りに香油を携えた。またベタニアのマリアがイエスに香油を注いだ。
- 書物: ベタニアのマリアは姉が立ち働く間もイエスの教えに聴き入っていた。すなわち教えを優先した。
- 十字架: イエスの磔刑に立ち会った。
- 髑髏: イエス磔刑の刑場「ゴルゴタ」は「されこうべの場所」という意味。
- 茨の冠: イエスが磔刑のさいに被せられた。
- 鎖の鞭: イエスが鞭打たれた痛みを追体験するため自らを鞭打つ
Vecellio Tiziano La Maddalena Galleria Palatina Firenze |
28 Feb 2006 (初出:19 Jan 2006)