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「原子力は夢のエネルギー」

日本の原発は地震に対し磐石か

3 Jul 2011

「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。

地震国日本の原発

 与謝野馨経済財政担当相は22日の閣議後会見で、福島第1原発事故に関連し、 「日本中どこの地域を探しても環太平洋火山帯の上に乗っている国だから(地震が多いという)その運命は避けようがない」と述べた。 これは原発推進の立場から地震が多いことは原発を止める理由にならないとの考えを強調した発言。
 同相は「将来とも原子力は日本の社会や経済を支える重要なエネルギー源であることは間違いない」と語り、 あくまでも原発を続けるべきだとの考えを示した。
(時事通信2011年3月22日)

与謝野発言の前半は正しい。「なまずの上の原発」と言われる所以 (よくわかる原子力「原子力発電と地震」)。 後半の発言は、まだ夢から覚めていない様子だ。その原発が「日本の社会や経済を」ズタズタにしているというのが、いまの現実ではないか。

jiban no zu

磐石の上に立つ原発

文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁が2010年2月作成の中学生向け副読本『チャレンジ!原子力ワールド』を見てみよう。

右図のように表層のやわらかい地盤を削り、しっかりとした地盤の上に直接建てるという。 これをやったのが福島第1発電所で、もとの地盤を掘り下げたために、津波被害を受けることになったのは皮肉。 とはいえ、記述どおりなら日本の原発は少なくとも地震に関し文字どおり「磐石」ということになるが、どうだろうか。

原子力発電所を建てる際は、周囲も含めて詳細な調査を行い、きわめてまれではあるが、予定地に大きな影響を与えるおそれのある地震を想定し、 それを考慮して重要な施設がこわれないような設計を行っています。 その設計がきちんとなされているかどうかを、大きな地震動を模擬できる大きな振動台で実物に近い設備をゆらす加振試験などを行って確かめています。
このほか、大きな津波が遠くからおそってきたとしても、発電所の機能がそこなわれないよう設計しています。 さらに、これらの設計は「想定されることよりもさらに十分な余裕を持つ」ようになされています。

(2010年2月『チャレンジ!原子力ワールド』p30)

地震で壊れた原発

『チャレンジ!原子力ワールド』が作られた翌年の2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震とそれにともなう津波(東日本大震災)が起き、福島第1原発では炉心溶融と水素爆発による広範囲な放射能汚染という大事故となった。 前節で引用したこの記述は批判を浴びて、配布されていた3万部を回収、またホームページでの公開も取りやめた (スポニチ2011年4月15日) 。 しかし今回の大震災が起こる前でも、地震による原発の停止は幾度も起こっている。幸いに過酷事故には至っていなかった。 ただ炉心溶融などの過酷事故にはいたっていないというだけで、原発が修理不能となるまでに壊れてしまった例はある。

2007年7月16日、新潟県中越沖地震により東京電力柏崎刈羽原発の全号機が停止した。 7基あったうちの2基、6~7号機は地震から2年後の2009年中に、また残り2基が2011年2月までに再開した。 地震から4年たった今年2011年7月現在、2号機~4号機の3基に復旧のメドは立っていない。 すなわち7基中3基は地震により死んでしまったと言ってよい。

改訂された(2006年)耐震基準をクリアできないとして、2009年1月30日、中部電力は浜岡原発の1~2号機を停止した。 これは事前の判断が救った例だ。その半年後、2009年8月11日に静岡沖地震が発生。地震当時運転中だった4号機と5号機が緊急停止した。 4号機は翌月復旧したが、 5号機では改訂された耐震基準をさえ上回る揺れが観測され、復旧できたのは1年半後 中電プレスリリース「浜岡原子力発電所5号機の営業運転再開について」2011年2月23日。 浜岡原発はけっきょく政府の要請により2011年5月には全部停止することとなった。

もともと浜岡に原発をつくるべきではなかった。地震国日本に原発を建てる無謀は昔から指摘されてきた (たとえば1981年の国会質問など。不破哲三『「科学の目」で原発災害を考える』)。 その危険は分かっているので十分な安全対策を施してきたはずだが、自然の力はいつもそれを超えていた。 フクシマまで過酷事故が起こってこなかったのはむしろ幸運だったと言ってよい。

東電は地震保険に入っていたか

ここで話題を変え、今回のフクシマの過酷事故の補償問題に関連して、東京電力は地震保険に入っていたかにというネタ話をする。 今回フクシマの賠償額は総額20兆円を超えるだろうという試算もあるが、天井はよく見えない。 これをどう負担するかということも問題となっている。 あまり報道されていないが、原発は自動車と同じく法により強制される賠償責任保険がある (電気事業連合会「原子力損害賠償法」)。 残念ながら最高額が1,200億円で、今回の場合ぜんぜん足りないのだが、その部分は保険会社から支払われることになっている。 ところで今回の場合、東京電力が地震保険に入っていないと、その保険は下りない。 はたして東京電力は地震保険に入っていたのだろうか、というのがここでの話題です。

1,200億円という数字が保険会社にとってとてつもなく大きい額なのか、大した額でもないのか、庶民にはよく分からないが、 とりあえずリスクを分散するため、各電力会社は複数の保険会社に分散してこれを掛けている。 ところが、地震特約についてはことごとく保険会社は辞退した。 その中でただ1社、日本の原発の地震保険を受けた会社がある。 そのおかげで、今回1,200億円は、その1社が全額を支払うハメになる。 さて、この不運な、 でも考えてみれば世界中の各社がしり込みする中で、地震国日本の原発の地震保険を受けてしまった、おバカな保険会社の名前を知りたくありませんか? たぶんみなさん馴染みがないと思います。 でも、その名前を聞けば、「あ〜、なるほど。」と思うでしょう。 さて、どこでしょうか?…… 正解はこちら



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