リッパー将軍の妄想
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』という長い題名の映画(1964年アメリカ)。東西冷戦下、米空軍の一司令官の独断によるソ連への核攻撃命令によって核戦争が勃発しそうになり、大統領はそれを食い止めようとするが失敗。人類滅亡への道が開く。「核抑止」の危うさを露わにすることとなった、笑えないブラック・コメディ。ことの起こりは「共産主義者の侵略がすでに進行している」という陰謀論に取り憑かれたリッパー将軍。その妄想とは……。
水道水にフッ素を入れるのは「共産主義者が仕組んだ」。水道水だけでなく「塩、小麦粉、砂糖やアイスクリームにまでそれは添加されており、それらを口することで、我々の純粋な体液が侵される」というものだった。

作者が何をヒントにこの陰謀論を思い付いたか定かでないが、ナチスドイツの「血と土」というスローガンに着目しよう。
ナチスドイツは食料安全保障の観点から食料自給率100%を目指した。都会を離れ農村で農事に就くことは奨励された。提唱された「バイオダイナミック農業」は農薬や化学肥料を使わない。「純粋なアーリア人」がドイツの土地を耕し、その作物を食べて「純粋なアーリア人」が育つという考え方が「血と土」というスローガンに込められている。
「食物から不純物を排除する」ことと、「アーリア人の血から不純な血を排斥する」こととは親和性が良かったのだ。やがてこれはユダヤ人の排斥から抹殺、すなわちジェノサイドへと辿り着いてしまう。
(参考リンク)20世紀・シネマ・パラダ イス
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ピルスナー・ビール
大阪・関西万博2025 私の万博グルメ旅も、これにて完結。国民一人当たりのビール消費量世界一の国をご存知だろうか。チェコがそれで、彼の国の人はそれを自慢する。ビール発祥の地でもある。ビールに香料としてホップを最初に入れたのがボヘミアのガンバリヌス王だとされる。ボヘミアは現在のドイツとチェコの国境地帯だから、両国とも「ビール発祥の地」を主張できる。
日本で発売されているビールのタイプはほとんどが「ラガー」。同じものを欧州では「ピルスナー」と呼ぶ。チェコ第2の都市ピルゼンにはビール博物館がある。「ピルスナー」の語源となった町。
大阪・関西万博2025チェコ館には3つの行列ができている。館内展示への列、館内カフェへの列、そしていちばん右がテイクアウトの列。
ウルケルという銘柄のピルスナー・ビール、瓶詰めしたものが輸入食料品店でも入手できる。しかしビールは生物で、時間とともに味は落ちる。万博用に樽で空輸してきたものはさすがに旨い。昔チェコで飲んでいた記憶が脳内をフラッシュバックした。これだけでも満足だ。
中東料理はイスラム圏なので酒類の提供が無い。オランダはビールの国なのに、なぜかテイクアウトに酒類を置いていない。そこでチェコ館でピルスナー・ビール(1,250円)をテイクアウトする。
サウジアラビア館で食事の後、チェコ館でビール。オランダ館でハーリングをテイクアウト、10分歩いてチェコ館で20分並んでビールをゲット。UAE館でマチュブースをテイクアウト、10分歩いてチェコ館で20分並んでビールをゲット。なかなかたいへんだ。

チェコ館でテイクアウトのビール。オランダ館のハーリングとともに
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塩漬けニシン
2025-05-25 追記 ネット情報によるとオランダ館のハーリングは 6月中、欠品が続いているようです。ニシン産卵期に禁漁期間があるので、その影響かと。オランダ本国では6月20日から解禁。万博にも早く届くといいですね。大阪・関西万博2025 私の万博グルメ旅のクライマックスは塩漬けニシン(ハーリング)(800円)。オランダ館でこれが提供されているということを知ったことが、私の万博行きの大きな動機になった。通販でも入手できるようだが、万博バージョンを是非にと。
オランダ館併設カフェは展示コースの出口付近にある。他のパビリオンでもそういう配置が多く、展示を見なくても出口から入場してカフェやショップを利用できる。だがオランダ館で出口から入ろうとすると制止される。入場は早朝などをのぞき全予約制。私の1回目はそれで入手できなかったので、後日に予約を入れてやっとゲット。
オランダ国旗が立っているのは万博バージョンというよりお祭りバージョン。オランダ人にとってのニシンはオランダ独立のシンボルであり、アイデンティティ。
オランダ独立戦争の最中、ライデンの町がスペイン軍に包囲され、兵糧攻めに遭った。もうダメかと思えたそのとき、援軍によりライデンは解放される。食料も持ち込まれ、そのひとつが塩漬けニシン(ハーリング)だった。それを記念した群像の中に、ニシンの尻尾をつまんで持ち上げ、丸かじりする男の姿が描かれている。毎年10月3日は「ライデン解放の日」として塩漬けニシンが振る舞われ、人々は絵画に描かれたのと同じように丸かじりする。
私も尻尾を持ち上げて丸かじりしてみた。骨は除かれている。こうすると手があまり汚れないので合理的な食べ方だと思った。食感は締め鯖に似ている。脂が乗っており、美味しかった。


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中東の炊き込みご飯
大阪・関西万博2025 私の万博グルメ旅2回目は 5月7日(水)、連休明け初日。薄曇りで弱い風もあり、天候は絶好だった。この日の一般来場者は7万5千人。UAE(アラブ首長国連邦)パビリオンは自由入場で待ち列は無い。建物正面左端に併設カフェの待ち列がある。テーブル数が少ないので、待ち時間は長いが、テイクアウトだと優先的に案内される。
ラム(羊肉)のマチュブース(2,800円?)をテイクアウト。地方によりマクブースあるいはカブサとも呼ばれる炊き込みご飯。「幻のアラブ料理」でアラビアン・ナイトに登場するものと推定したマンディも似た料理。
東はタイ、西はパキスタンの広くに及ぶビリアニと呼ばれるものとほぼ同じだが、中東では唐辛子が使われていないので辛くない。ただ、ここのものはすごく塩辛かった。同系の料理はスペインに渡るとパエリャとなる。
中東は小麦文化で種類豊富なパンがある。このような米料理はパーティー料理の扱い。パーティー料理だということでは日本のちらし寿司も同じ系列なのかも。

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牛乳粥
大阪・関西万博2025 に2度足を運び、4つの海外グルメを堪能したので、順次紹介していく。私の万博グルメ旅1回目は4月15日(火)。開幕3日目で、荒天ということもあって、来場者は4万6千人。たぶんこれが万博期間中最低記録となるだろう。以降は6万〜10万人が続いている。
この日は西ゲートに朝10時半到着。チケット引換所で当日ケットを購入。これにはQRコードが印刷されていて、万博IDもスマホも必要ない。この時間、入場ゲートはガラガラで、すんなり入れた。
サウジアラビア王国パビリオンは建物正面右側に展示室への列。これとは別に正面左側にレストランの待ち列がある。階段を登った2階にソファー席、その奥か上かに座敷席があり、テラス席もあるという。万博会場中最強と私は思っている。この日、12時ちょうどに並んで2時間待ちだった。休日だと4時間待ちとも聞く。開店も受付も11時から。すでに10時ごろから多くの人が近くで待機している。開店前に整理券を配るなど改善を期待したい。日本語が話せるスタッフは一人だけだが丁寧。
メニューは「小皿」、「大皿」、「シェア」とデザート、ドリンク。待機中にサウジ・コーヒーのサービスがあったのでドリンクなどをパスし、私は大皿料理のうちの一つを注文した(2,000円)。写真では分からないが皿が大きいだけで、ポーションがあまりに小さい。水とおしぼりが出てきたのはちょっと驚き。
鶏のテリーヌらしきものにバジルソース。美味しかった。これに付いてきたのが牛乳粥。「牛乳粥の旅」の記事で取り上げたものとは違って、砂糖が使われておらず、チキン・ブイヨンと牛乳で炊きあげられている。中華料理の粥にミルクを加えたような味わい。アラビアン・ナイトに出てくる「クリーム飯」は、むしろこちらのものかも知れない。
サウジアラビア王国館レストランのメニュー→こちらから

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