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「原子力は夢のエネルギー」

原子力を「準国産」と呼べる日は来るか

28 Aug 2011 外部リンクを追記 (23 Jun 2011 初出)

「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。

ウランも100%輸入だよね

「資源の少ない日本では原子力に頼ることも止むを得ない」 と、もしあなたが考えるとしたら、それはどういう理由からだろう。 「日本にはエネルギー資源が少ないが、ウランだけはある」などという話を聞いたことはない。 ウラン鉱石の輸入先はオーストラリア、カナダなど。ウラン濃縮は7割以上が米国なので、オーストラリアはさておき、日本やカナダを米国の属国だと規定すれば「準国産」と呼ぶのは理解できる。

「資源の少ない日本で原子力が必要」とする理由はたとえば 2010年文部科学省作成の中学生向け副読本「チャレンジ!原子力ワールド」などにある。

「現在日本では石炭や石油だけでなく。天然ガスや原子力の燃料となるウランについてもほぼ全量が海外から輸入されているため、エネルギーの自給率は水力などわずか4%です。
エネルギー源の中で、ウランは一度輸入すると長期間使うことができ、また再利用できることから、原子力を国産に近いエネルギー(準国産エネルギー)と考えることができます。 この考え方によれば、エネルギー自給率は約18%となっています。」
(原子力発電のしくみー前出「チャレンジ!原子力ワールド」p8)

燃料の体積が小さいから買いだめできるってことね。 でも、それで「準国産」と呼ぶのは、なんか無理やり。 それはさておき、「再利用」ができるならば魅力的ではないか。

夢のサイクル

そもそも日本に資源が無いというのはウソで、日本は豊かな自然と資源に恵まれた国なのだが、そのことはここでは置いておく。 「狭い国土に住む日本人は技術力で生きていかねばならない」。この表現も問題アリだが、なんとなく説得力がある。 国土は狭くても人的資源は……知恵ならあるということか。 そこで高速増殖原型炉に名付けられたのが知恵の「もんじゅ」。

原発でウランを燃やすとプルトニウムができる。 ウランは広島型原爆の材料だが、長崎に落とされた原爆はプルトニウムでできていた。 同じように原爆の材料なら、プルトニウムを燃やしても電気が作れるのではないか。 おまけにプルトニウムを燃やすとプルトニウムができる。と、いうことは…… え〜、こんなうまい話、乗らないでどうします。

最初の事故

とはいえウランでさえ完全には制御できていないのに、プルトニウムを制御するのは簡単ではない。 ウランは自然界にある放射性物質だが、 プルトニウムは自然界にはほとんど存在せず、原子炉からのみ作られる。 その放射性や危険度はウランより格段に大きい。

高速増殖原型炉「もんじゅ」は10年の歳月と5,886億円の建設費を掛け(日本原子力研究開発機構「もんじゅ」についてお答えします)、 1995年8月29日 初発電を達成した。 同年12月8日 ナトリウム漏洩事故発生 (日本原子力研究開発機構「高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故と原因究明のあらまし」) (「動燃がカットしたもんじゅナトリウム漏れ事故の映像」YouTube)。 そのセミのように短い一生を終えたかに見えた。

90日間の復活劇

しかし諦められないのか、「もんじゅ」はゾンビのごとく……失礼、不死鳥のごとく復活する。 2010年5月5月6日、じつに14年半ぶりに運転を再開。 しかし同年8月6日、燃料棒交換作業中に炉内中継装置が炉内に落下。 以来何度か引き抜きを試みるも、いまだ成功していない (日本原子力研究開発機構のページ)。 わずか90日間の復活劇だった。燃料棒交換に必要な装置が壊れているわけで、現在「もんじゅ」は運転できないばかりか炉内に残る燃料棒を撤去することもできない、言葉どおりに抜き差しならない事態が続いている。

25 Jun 2011 追記
炉の上部を一部切り取る荒療治の末、昨日2011年6月23日、引き抜きに成功した。今後、炉の復旧作業に入るという (2011年6月25日 読売新聞)


(2010年文部科学省作成の中学生向け副読本「チャレンジ!原子力ワールド」p33)

「もんじゅ」がダメでもプルサーマル

高速増殖炉に見込みの無い中、いまある原発でプルトニウムを燃やそうとするのが「プルサーマル」計画だ (電気事業連合会のページ) 。 いわば灯油ストーブでガソリンを燃やそうというこの計画に 当然の不安と抵抗はあるものの、2009年以降合わせて4基の原発で使われている。福島第1でも3号機にこのMOX燃料が使われていた。

これでようやく使用済核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の絵が描ける。 ただし、これはまだ絵に描いた餅。 というのは、 使用済核燃料の再処理はフランスや英国に依頼しており、プルトニウムを混入するMOX燃料も現在のところフランス製。

12 Jul 2011 追記
なぜフランス製なのか、アメリカから買わないのかというと、 米国では使用済み核燃料の処理はコストや技術的に無理・無駄と考え、これをやっていないから。 米国では使用済核燃料はそのまま原発敷地内に置いている。 これをこのまま地層処分する計画だが、実行は危ぶまれている(ユッカマウンテン計画。 「核処分場計画は打ち切り」2009年05月08日 共同通信。 「モンゴルに国際的核処分場建設を」2011年07月01日 共同通信。 )。

「逃げ水」の完成予定

使用済核燃料からプルトニウムを取り出す再処理は東海村でのテストプラントを経て、青森県六ヶ所村に再処理工場を建設することとなった。 当初の予定では1997年の完成を目指していた。 しかしトラブル続きでこれまで18回もの延期、本格稼働の予定は逃げ水のようにいつも「2年後」となっている。 当初は建設費7600億円としていたが、すでに2兆1930億円を費やしている。 (朝日新聞「六ヶ所村の再処理工場完成延期」の記事) (日本原燃のページ)

原子力を「準国産エネルギー」と呼べるのは、まだ遠い先の夢のようだ。

行き所の無い廃棄物

使用済核燃料を再処理する過程で高レベル廃棄物が出る。 原発から出る低レベル廃棄物は各原発敷地内や六ヶ所村の埋設センターに置かれているが、 高レベル廃棄物は現在六ヶ所村の貯蔵管理センターに仮り置きされている。 この最終処分地はまだ決まっていない。 (日本原燃のページ)


外部リンク

28 Aug 2011 追記
「もんじゅ」の2回の事故(1995年と2010年)のそれぞれで一人ずつ、関係者が「自殺」とされている不審死がある。 触れないわけにはいかないので、参考リンクを掲げておく。


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