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「原子力は夢のエネルギー」

自然エネルギーは原発の代替足り得るか?


menseki hikaku
「チャレンジ!原子力ワールド」
(文部科学省が2010年に作成、配布した中学生向け副読本)より

10 Jun 2011 「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。

自然エネルギーは原発の代替足り得るか?

「原子力1基分の電力量を太陽光発電で実現するには山手線の内側と同じ面積が必要」だとか、 「風力発電で実現するには……云々」、 また建設コストも大きく「太陽光発電や風力発電の導入は電力コストの増加要因」などという試算や議論が散見される。 しかし、いまさらこのような論点を持ち出すのは的が外れている。

自然エネルギーは原発の対抗馬ではない

dengen betu
「チャレンジ!原子力ワールド」(前出)より

何が的外れかというと、原子力は比較の対象になり得ないということだ。 この議論は2009年7月の「低炭素電力供給システムに関する研究会報告書」で、CO2削減の切り札として原子力、太陽光発電、風力発電の3つを候補に挙げ、 そのうちで必要な敷地とコスト面で原子力がもっとも優れているというもの。 たしかに原子力はウランを燃やしてCO2を出さないが、放射性廃棄物を発生する(「チャレンジ!原子力ワールド」)。 その放射能は敷地からは出さないというのが大前提だったが、その前提は福島の事故で脆くも崩れた。 仮に福島のような大事故も、小事故での放射能もれも無かったとしても、 作られた放射能はどんどん溜まり、それをどうするかという展望は無い。

CO2を分解する手段を私たちは知っている。緑がそれを生き物に必要な酸素に、また栄養素に変えてくれる。 しかし放射能を無害にする手段を現在の人類は識らない。

原子力は低コストなのか?

「原子力は安全」という神話は崩れた。 同時に「原子力は低コスト」という迷信も崩れたのだ。 福島のようにひとたび大事故を起こせば、東京電力でも潰れるかもしれないというところまでいってしまう。 仮にそのような事故が無かったにせよ、安全対策は充分に取ることが求められ、とうぜんそのコストは上昇する。 それ以前に、次々生み出される放射性廃棄物をどうするかという見通しが無い中ではそのコストを計ることすらできない。

核燃料サイクルについて言えば、ウランを燃やしてできるプルトニウムをもういちど燃やそうという「もんじゅ」は事故が続き再開の目処は立っていない(日本原子力研究開発機構のページ)。 使用済核燃料からプルトニウムを取り出そうという六ヶ所村の核燃料再処理施設は1997年操業開始予定だったはずが遅れに遅れ、いまはその目標時期すら示せない(日本原燃のページ)。 もし仮にこれらが成功したとしても、残る放射性廃棄物を最終処分する展望も無い(日本原燃のページ)。 これでどうやってそのコストを試算できたのだろう?

化石エネルギーか再生可能エネルギーか

原発事故をきっかけに太陽光や風力などの自然エネルギーが脚光を浴びるのはけっこうなこと。 しかし、原発の代替としてそれを論じるのは当たっていない。 問題は石炭・石油・天然ガスなどの化石エネルギーか、それとも水力・風力・太陽光、 これらにバイオマス(燃焼によりCO2を排出するが、原料となる植物を育成する過程でCO2を分解するので差し引きゼロ)を加えた再生可能エネルギーなのかという問題であって、 原子力はそもそも予選落ちなのだ。

原子力が化石エネルギーの代替になるというのは百年早い。……安全性と放射能の問題が解決されればだが、それも夢のまた夢。

この話の続きは→「脱原発で上がる電力コスト」へ


「原子力は夢のエネルギー」
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