生活保護が特権となる理由

まじめに働いているワーキング・プアよりも、働かぬ生活保護受給者のほうがマシという非合理はなぜ起きるのか。

建前で言うと2007年の最低賃金法改正(2007/11/29 J-castニュース)で、最低賃金を上げる方向でこれを是正することが決まっている。また働いている、あるいは年金収入があっても生活保護基準より低ければ、不足分は生活保護で補われる。なので制度上は、働いている者が生活保護受給者より困窮することはあり得ない。

財界の抵抗で最低賃金のアップは充分でない。そこで逆に生活保護支給基準のほうを下げるのが安部内閣(産経 2013.2.28)。この生活保護支給基準は、日本の所帯を所得の低いほうから並べて10%のレベルを目安としている。そうすると理屈の上で総人口の10%、その数1,200万人が保護対象者となるはずだ。ところが、じっさいの受給者は200万人。1.6%でしかない。



いまここに生活困窮者6人が居たとすると、生活保護を受けているのはそのうち1人。あとの5人はそれを羨ましく見ているだけということになる。受ける権利を知らずにいる人も居るだろう。しかし窓口に相談に行っても追い返されるケースが多い(参考1)。2012年札幌で餓死した姉妹は相談窓口に何回か足を運んでいるが、申請書すら渡されていない(参考2)。生活保護を受けるには、本人に根性があるか、議員の紹介あるいは支援する団体の後押しでもないと難しいという実状となっている。困窮者6人中、生活保護を受けられるのは1人。それが最貧困者とも限らない。これが生活保護が特権に見える理由。

生活保護の不正受給など制度が悪用されることがある。しかし不正受給とは言えないものまでバッシングを受けている例も多い。たとえば2012年に話題になった有名芸人の母親が生活保護を受けていたという問題も、当の芸人から母親への仕送り額などを福祉事務所と話し合っており、不正でもなんでもない(参考3)。大阪市は警察官OBを含む不正受給専任チームを置いている。悪質な貧困ビジネスの摘発などは成果と言える。だが不正受給でないものまで「摘発」するという事例もある(参考4)。

兵庫県小野市は、生活保護費や児童扶養手当をギャンブルで過度に浪費することを禁止し、浪費を見つけた場合、市民に情報提供を求める条例を作った(参考5)。生活指導はケースワーカーの仕事で、条例化する必要性もないし、市民監視をさせるというのも恐ろしい。

生活保護費のうち不正受給の割合は金額で0.4%。これは摘発されたもので、じっさいはもっと多いという論もある。しかし、対象者であるはずなのに支給を受けていない人数は500%。市民監視をするならば、恩恵を受けていない人々を見つけ出し救済することのほうが、むしろ必要ではないか。


関連記事: 生活保護は誰のため
参考リンク:
1.北九州市役所、水際作戦… (2009/06/09 奈良たかし 生きてるしるし)
2.札幌市姉妹「餓死」… (2012年6月3日号「守る新聞」全国生活と健康を守る会連合会)
3.お笑い芸人の“生活保護”事例は… (2012年07月25日 HIRO さんのブログ)
4.不正受給扱いが撤回された事案… (2013年3月4日 生活保護問題対策全国会議)
5.「生活保護パチンコ禁止条例案」に異論噴出 (2013年03月04日 産経)


Posted on 28 Mar 2013, 17:23 - カテゴリ: 経済
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