生活保護は誰のため

政府は生活保護基準額の見直しで3年間で約670億円削減する方針(参考1)。日本の生活保護費は3兆円を超えている。だが諸外国と比べてみると…。英国などに比べ米国はその1/4、日本はそのさらに半分でしかない。(「あなたの暮らしも危ない?誰が得する?生活保護基準引き下げ 」日弁連 2012年11月 作成のパンフより)



生活保護基準額を引き下げると、生活保護対象者に限らず低所得者層の広く影響が及び、消費不況をさらに深刻化させる(参考2)。いっぽう景気対策として公共投資を今後10年間で200兆円を投じるという(参考3)。「財政赤字を増やしてでも景気対策」。「財政赤字を減らすため社会保障を削減」。矛盾してないか。

奇妙な質問だが、生活保護費は誰の懐に収まるのだろう。もちろん受給者に決まってる。だが、貧乏人はそれをすぐに使ってしまう。使わずには生きていけない。なのでその金は貧乏人の財布に落ち着いていることはない。「金は天下の回りもの」というわけだ。対して金持ちは余分なお金は貯め込むか投機などいらぬところに使う。実体経済に寄与しないばかりかバブルという弊害を与えることもある。

生活保護に使おうと公共投資に費やそうと、それで民間経済は潤う。問題は上から注ぐのと下から注入するのとどちらが効果的か。「大企業が儲かれば下請け企業、社員に、やがて小売業へと経済が循環する」という図式は高度成長期の幻想。『お金の回り方』でここ25年間の実績に見たように、その利益は大企業の懐に止まるだけ。

「生活保護を手厚くすると、みんな働かなくなってしまう」との議論がある。それは要らぬ心配。荒っぽい言い方を許してもらうと、いま働き手は余っている。完全失業者は約300万人。いっぽう、働ける世代を含む「その他の所帯」は30万に満たない。これには働いてはいるが所得が少ないために生活保護給付を受けている者も含まれる(参考4)。逆に働いても生活保護基準以下という状況こそ克服されるべきではないか。

参考リンク:
1.社会保障「自助・自立を第一に」具体策は参院選後 (産経 2013.2.28)
2.「生活保護費引き下げの影響」 玉突き式に他制度と連動も (産経 2013.2.11)
3.安倍新政権20兆円緊急経済対策 赤字だけが残る懸念ぬぐえず(週刊ダイヤモンド 2013年1月15日)
4. 働き盛りの生活保護は本当に許されないのか (みわよしこ、週刊ダイアモンド 2012年7月27日)

Posted on 11 Apr 2013, 12:44 - カテゴリ: 経済
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